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暗黒物質(ダークマター) ~ 消えた反物質の謎


前回の記事の最後で触れた、素粒子の標準模型では説明のつかない謎のお話しをします。


まずは暗黒物質(ダークマター)です。
「この名前は聞いたことがある」と言われる方が結構いらっしゃるんじゃないでしょうか?
私もテレビ番組で何度か聞いたことがあります。

もしかすると名前からのイメージで「空想上の物質」と思われているかもしれませんね。
実は、正体は不明ながら存在は確かな物質なんです。暗黒物質の存在を前提にしないと、
つじつまの合わない現象がいろいろとあるんですね。

その1つが「太陽系が天の川銀河にとどまっている」という現象です。

太陽系が動いているスピードは秒速220キロメートルと分かっているんだそうです。
スピードが分かれば太陽系に働く遠心力が分かります。天の川銀河全体の星やブラック
ホールなどをすべて集めても、それとつり合う重力にはならないんだそうです。

実際には遠心力と重力がつり合っている状態と観測されている訳ですから、不足の重力を
生む正体不明の何かがあると言わざるを得ません。これが暗黒物質という訳です。
宇宙全体の量を、星をつくっている原子と暗黒物質で比べた場合に、暗黒物質は原子の
約5倍あることになるんだそうです。

宇宙空間に存在する暗黒物質を検出する試みや、実験で暗黒物質をつくる試みは現在行わ
れているんだそうです。暗黒物質の正体が明らかになれば「宇宙が何でできているか」
という謎が解明され、ビッグバンからおよそ100億分の1秒後の宇宙のことが分かるん
だそうです。


現在の宇宙の成り立ちを説明するためには、もう1つ大きな謎があります。
それは「消えた反物質の謎」と呼ばれています。

すべての粒子には反粒子が存在し、その反粒子でできあがっているのが反物質です。
反物質は物質と出会うと消滅してしまいます。反物質も「空想上の物質」と思われそう
ですが、反陽子の周囲を陽電子(反電子)が回る反水素原子は実験室で作られたことが
あるんだそうです。

ビッグバンの直後、すさまじい高エネルギー状態の初期宇宙には反物質がたくさんあった
はずなんだそうです。今は通常状態では反物質は存在しない訳ですから、ビッグバンから
時間がたつにつれて反物質と物質が出会って同じだけ消滅していったことになります。

物質の方が反物質よりも10億分の2だけ多かったから、私たち物質がこうして宇宙に
存在していると計算されるんだそうです。
この理由の説明が出来ない事を「消えた反物質の謎」と呼ぶそうなんです。

この謎の解明のために、ニュートリノの観測がされているそうです。

太陽から届くはずのニュートリノが、予想される量の3割から5割程度しか見えないと
いう現象があります。この現象はニュートリノ振動という現象の観測で解決されました。
ニュートリノは時間とともにフレーバー(直訳すると「味」)が変わったり戻ったりして
いるんだそうです。フレーバーが違うニュートリノは観測装置では見えないんですね。

この事から類推して、ニュートリノが反ニュートリノに変わることがあるんじゃないか?
そしてニュートリノが反物質をほんの少しだけつまみ取るようにして物質に変えたんじゃ
ないか?と考えているんだそうです。

この考えが正しいとすると、ニュートリノが反物質を消したのはビッグバンからおよそ
1兆分の1のさらに100兆分の1秒後になるそうです。


今回お話しした2つの謎をめぐる研究は、宇宙の始まりを探ることにもなります。
それならば、「宇宙の終わりを探る研究は?」と聞きたくなりますよね。

このシリーズでずっと参考にしてきたこの本
 宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
でも次はそのお話しで、そして最後のお話しになりそうです。

もし「宇宙と素粒子」のお話しの中で、もう少し説明を付け加えて欲しい等のご希望が
ありましたら、記事へのコメントを入れてください。検討したいと思います。




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弱い力 ~ ヒグス粒子

私が参考にしてきたこの本
 宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
も終盤に近付いたんですけど、さすがに一般の方に理解してもらえるように
説明するのは難しいお話しばかりになってきました。

ということで、今回もまた、かなりざっくりとした説明になりそうです。
あらかじめご了承ください。



これまでに電磁気力と強い力の説明をしましたね。今回は弱い力を説明します。


 陽子と中性子をつくっているクォークの種類
その予備知識としてまずは、陽子と中性子をつくっているクォークの種類のお話し
をしておきます。クォークの種類は6種類あるんですけど陽子と中性子をつくって
いるのは、アップクォークとダウンクォークの2種類です。

陽子はアップクォーク2つとダウンクォーク1つからできています。
中性子はアップクォーク1つとダウンクォーク2つからできています。


 弱い力が働いている現象の例
本題の弱い力の説明に入ります。
 電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる
の回で、「弱い力はベータ崩壊を起こす力」と軽くご紹介していました。ベータ崩壊
では中性子が陽子に変わり(ダウンクォーク1つがアップクォークに変わり)、電子
とニュートリノが放出されます。

他にも弱い力が働いている現象があります。

太陽では水素原子4つがヘリウム原子1つになるという核融合反応が起こっていま
す。この反応では陽子が中性子に変わり(アップクォーク1つがダウンクォークに変
わり)、陽電子とニュートリノが放出されます。この際に弱い力が働いています。

「弱い力はクォークとレプトンに働く力」と理解するのが良いようです。
参照⇒素粒子の標準模型

 弱い力を伝えるボソン
弱い力を伝えるボソンですが、電荷によって2つの名前が付けられています。
Wボソン・・・電荷を持ち、+と-のものがある。
Zボソン・・・電荷を持たない。
すべてまとめて呼ぶ場合は、ウィークボソンと呼んでいます。

先に挙げた例で言えば、ベータ崩壊では1つのダウンクォークから-電荷のWボソン
が放出され(アップクォークに変わり)、そのW(-)ボソンがすぐに電子とニュートリノ
に崩壊します。

核融合の場合では、1つのアップクォークから+電荷のWボソンが放出され(ダウン
クォークに変わり)、そのW(+)ボソンがすぐに陽電子とニュートリノに崩壊します。

弱い力の到達距離は強い力の1000分の1程度です。
 湯川理論
の回で到達距離が短いと力を伝える粒子の質量が大きいというお話しがありました
ね。ウィークボソンはパイ中間子と比較にならないほど重い粒子です。


 素粒子に質量を与えるヒグス粒子
 電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる
の回で、自然界に存在する4つの力をたった1つの原理で説明したいと研究されてい
る、と触れました。電磁気力と弱い力を統一的に扱う理論はできていて、エネルギー
を高めていくと両者の値が近づくことも分かっているそうです。

電磁気力は光子の交換で伝わるので、無限に遠くまで届きます。それに対して弱い
力は今回お話ししたように、原子核の直径の1000分の1しか届きません。光子が
質量を持たないのに対してウィークボソンが重いからですね。

もともとは同じ力だったとしたら、なぜウィークボソンの方だけが重くなったのか?
この疑問の説明としてヒグス粒子というものが考えられています。

「粒子は宇宙に充満しているヒグス粒子にぶつかることで重さを得る」と考えられている
んです。またヒグス粒子は電気を持っていないので電磁気力を伝える光子は反応せず
に素通りできる(=質量を持たない)と考えられています。

ヒグス粒子は理論的に予測されているだけで、まだ発見されていません。ヒグス粒子が
発見されれば、標準模型が完成したことになるんだそうです。



宇宙が何からできていて、どんな法則に支配されているのかを説明するのが「標準模型」
で、その完成が間近だということです。自然科学ではよくあることですが、この標準模型で
は説明のつかない謎が次々と出てきているとのことです。

次回はその謎に関するお話しになる予定です。





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クォークが単独で観測できない理由


お断り:前回の記事は読んでいただけているものとして、お話しを
     進めさせていただきます。
参照⇒湯川理論


パイ中間子の発見以後、続々と新しい粒子が見つかりました。
これらの粒子を「ハドロン」と呼びます。
「ハドロン」とは強い力に関係する粒子、と覚えておくとよいようです。

「ハドロン」には「メソン(中間子)」と「バリオン(重粒子)」の
2種類があります。この2つの、分類した当初の違いは重さの違いでした。
メソン :陽子より軽くて電子より重い粒子
バリオン:メソンより重い粒子

後にクォークによる説明で、次のようになります。
メソン :クォーク2つからできている粒子
バリオン:クォーク3つからできている粒子

強い力とは関係ないニュートリノや電子などは「レプトン(軽粒子)」と
総称されています。
参照⇒素粒子の標準模型


続々と見つかったハドロンを、そのすべてをより単純なもので説明しようと
考えられて生まれてきたのが「クォーク理論」です。

「クォーク理論」を理解するためには、「色荷」と名付けられているものに
ついて理解する必要性があります。そして「色荷」を説明しようとすると避
けることが出来ない原理が出てきます。それは「パウリの排他原理」という
ものです。

パウリの排他原理によると、クォークやレプトン(総称して「フェルミオン」
と呼ばれています)は同じ場所に1つしか置けません。参考までに力を伝える
素粒子ボソンは排他原理に従わず、同じ場所にいくらでも詰め込めます。光子
もボソンの一種ですので、レーザー光線あたりからある程度ご理解いただける
かと思います。
参照⇒素粒子の標準模型
     電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる

排他原理に従う粒子であれば単独で観測できるはずなのですが、クォークは単
独で観測できません。このことを説明するために考えられたものが「色荷」にな
るんです。

「色荷」という名前は、色の性質にたとえると説明しやすいことからつけられ
たものです。1種類のクォークには(光の三原色である)赤・緑・青の3種類
の色荷を持ったものがあり、さらにその反クォークには反赤・反緑・反青の3
種類の色荷をもったものがある、と説明されています。

「色荷」は電磁気力における「電荷」のようなものと見なされ、強い力の源泉
だと言えます。プラス電荷とマイナス電荷が引き合って0電荷になりたがるよ
うに、赤色荷と緑色荷と青色荷が引き合って白色荷になりたがったり(バリオ
ン)、赤色荷と反赤色荷(緑や青の場合も同様)が引き合って白色荷になりた
がる(メソン)と考えるんです。

プラス荷電粒子やマイナス荷電粒子は単独で観測できているのに、色荷の場
合には必ず白色荷粒子が観測されていることになりますね。電荷との違いを説
明したいと思います。強い力を伝えるボソンには「グルーオン」という名前が付
けられています。クォークはこのグルーオンを吸ったり吐いたりして結びついてい
ます。

さらにグルーオンも色荷を持っていて、グルーオンがグルーオンを吸ったり吐
いたりできることが実験で確認されているそうなんです。この事を踏まえて、
クォークの距離とグルーオンの量(=力の強さ)の関係を考えてみましょう。

2つのクォークが限りなく近い場合には、2つのクォーク間にはクォークが直
接やりとりしているグルーオンしかないと考えられます。2つのクォークの距
離が離れるほどそれに加えて、グルーオンが吸ったり吐いたりしているグルー
オンが増えていくと考えられます。

このことから、クォークの距離が離れるほどクォーク間に働く力が強くなるん
ですね。それゆえクォークはハドロンの中に閉じ込められ、外に出ることが出
来ないんです。

又、無理やり引きちぎることもできるけれども、その場合は分離されたクォー
クはすぐに反クォークと結びついて中間子をつくるそうなんです。(この部分
に関しては、私は完全には理解できていません。)

クォークが単独で観測できない理由はご理解いただけましたでしょうか?
必ず白色荷になったハドロンの状態で観測されてしまうんです。



だんだんと難しいお話しになってきましたね。私自身も「この理解でいいんだ
ろうか?」と思う点が出てきています。もし間違っている点がありましたら、
ぜひご教示ください。




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今回もこの本の内容を参考にしています。
 宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)





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